夫婦別姓のメリット・デメリットと日本での問題点

最近増えてきた「夫婦別姓」。

「夫婦別姓」とは結婚している夫婦がそれぞれ違う名字を使う事です。

 

以前の日本では社会的に「妻は夫の姓を名乗るもの」という常識感がありましたが、近年女性の社会進出に伴いこの夫婦別姓が見直されてきています。

 

しかし、この夫婦別姓という制度は日本ではまだまだ馴染みの薄いものであり、様々なメリット・デメリットが存在します。

これからの日本で増えていくであろう夫婦別姓。

 

今回は、この夫婦別姓の事をおさらいしながら、今だからこそ知っておきたいこの夫婦別姓のメリット・デメリットについてみていきましょう。

夫婦別姓と日本

まずはじめに、日本における夫婦別姓についてみてみましょう。

 

日本で夫婦別姓がどのように考えられているかを知るためには、まずはじめに法務省の考えを知ることが最も適切であるといえるでしょう。

 

一般的には、「夫婦別姓」と言われるこの制度ですが、法的には「姓」や「名字」のことを「氏」といいますので、正確には“夫婦別氏”、更に夫婦別姓が可能な制度のことを「選択的夫婦別氏制度」と言います。

このページでは、わかりやすさを優先するためにこれからも夫婦別姓という文言を用います。

 

さて、法務省には夫婦別姓のことについて詳しく記載されてます。

【参考】

法務省:選択的夫婦別氏制度(いわゆる選択的夫婦別姓制度)について

法律を読み慣れていない人には難しく感じるかもしれませんが簡単に言うと次のようなが書かれています。

・今の法律では結婚したら、妻か旦那、どちらか一方の姓を使わなければならない。(つまり、夫婦別姓は認めていない)

・夫婦別姓の需要があることはわかっているが、今はまだ国民の意見が煮詰まってないため、国会で検討していない。

・夫婦別姓については、引き続き検討する。国民の理解が進めば導入を進めたいと思っている。

・国民全体にアンケートした所、夫婦別姓 賛成派:反対派は両方とも約35%である。
若い人では約半分が賛成派、反対派は約2割。年配では賛成派約3割、反対派が約4割。

 

つまり、法務省では、「夫婦別姓の必要性はわかっているが、法律変えるのにはまだ早いかな・・・」という考えているようです。

 

今のところ日本では、唯一、国際結婚の場合を除いてこの夫婦別姓は認められていません。

 

しかも、夫婦別姓が認められていないのは、世界中で日本だけだそうです。

では、夫婦別姓にはどのようなメリット・デメリットや問題点があるのでしょうか。その問題点について考えていきましょう。

夫婦別姓のメリット

夫婦別姓の最大のメリットは「結婚した後も結婚する前と同じ名字で生活が出来る」ということです。

 

実際に、結婚して名字が変わった後に様々な不都合を感じたことがある人は少なくないと思います。

夫婦別姓で結婚した後も前と同じ名字で生活が出来るのであれば、これらの不都合は生じません。

 

逆説的ではありますが、夫婦別姓のメリットとは「夫婦同姓(結婚後、名前が変わること)のデメリットを解消できること」だといえるでしょう。

夫婦同姓のデメリットとは?

では、夫婦同姓(名前が変わること)はどのようなデメリットがあるのでしょうか。

代表的なものでは、下記のようなものが挙げられます。

名前を変える手続きが面倒

まずはじめにあげられるのが姓を変えることによる各種登記などの手続です。

姓を変えるとなれば、当然様々な手続がでてきます。

 

免許証の更新等の公的なものから、クレジットカード等の私的なものまで身の回りの自分の名前の付いたあらゆるものを一度書き換えなければならないという大変な手間が生じてしまします。

 

ちなみ、郵便物などは住所が合っていれば基本的には届きます。

仕事などで不都合

例えば、夫婦同姓に基づいて名前を変えた場合、今まで「佐藤さん」と呼んでいた人を「鈴木さん」と呼ばなければならなくなります。

 

ご近所づきあいであれば多少の呼び間違いもご愛嬌ということになるかもしれませんが、お仕事では名前の呼び間違えなどはあってはなりません。

しかも、呼ぶ相手が目上の方の場合、大変失礼になってしまいます。

 

小さなコミュニティであれば名前が変わったことは周りにも浸透しやすいかもしれませんが、大きなコミュニティであればあるほど、それは難しくなります。

 

例えば、大企業である取引先の役員さんが同時期に3名、別の名前に変わってしまったら、軽いパニックになってしまうのではないでしょうか。

また、大きなコミュニティであればあるほど浸透に時間がかかるため「実は半年間名前を呼び間違えていた」などということをもありえます。

離婚した時に気まずい

夫婦別姓の最後のデメリットは「離婚した時に気まずい」ということです。

先程の例で行くと、今まで「佐藤さん」と呼んでいた人が結婚して、「鈴木さん」と呼ぶことになったとしても、離婚をしてしまうとまた「佐藤さん」に戻ってしまうのです。

 

このような状態は当人が一番気まずいとは思いますが、周りの人もなかなか気を使います。

しかも、近年の日本、離婚するケースが年々増加しています。

離婚と夫婦同姓

現在、厚生労働省の発表によると、日本の夫婦は2分に1組のペースで離婚をしています。割合で言うと、3組に1組は離婚を経験している事になります。

 

こちらのグラフを見れば、2013年の離婚件数が婚姻件数(=結婚した数)の約1/3であることは、感覚的にも納得できますね。

※厚生労働省「平成22年人口動態統計」より

しかも、結婚件数がさがり、離婚件数が上がるということは離婚の【割合】がどんどん増加している事がわかります。

最近の日本では夫婦同姓による「名字戻り現象」のは年々起こりやすくなっているのです。

 

また、余計なことではありますが、「結婚すると女性の名字は変わる」ということを前提にすると、結婚する回数が多いと名字も頻繁に変わることになります。

例えば、間隔をあけて3回結婚すると仮定すると、名字はこのように変わっていきます。

 

佐藤さん→鈴木さん→佐藤さん→山田さん→佐藤さん→田中さん

 

これは、精神的にも事務的にも非常に負担ですね。

 

夫婦同姓という制度は、このような負担を強いる制度であるとも言えるのです。

そして、このような負担を解消するのが「夫婦別姓」であるといえます。

 

これだけを見ると夫婦別姓にメリットが有ると思われますが、一方でどのようなデメリットや問題点があるかをみてみましょう。

夫婦別姓のデメリット

夫婦別姓のデメリットは大きく次の3つにまとめられます。

  1. 子供の苗字問題
  2. 珍しがられる
  3. 結婚のメリットが得られない

それぞれ、詳しく考えていきましょう。

 

子供の名字問題

まず、デメリットと呼ぶにふさわしいかは夫婦別姓のハードルとして最初に思いつくのがこの「子供の名前」でしょう。

 

例えば、佐藤さんと鈴木さんが結婚した場合、子供の名字は佐藤にするのか鈴木にするのか、決定する必要があります。

選ばれなかった名字の親族に違和感

仮に子供の名字を「佐藤」にした場合、夫婦間で納得していたとしても、「鈴木」さん側の親族が違和感を感じることは簡単に想像出来るでしょう。

 

きっと佐藤さん鈴木さん夫婦が、夫婦同姓で「佐藤」を選んだときなら、子供の名字が「佐藤」でも鈴木さんの親族は抵抗はなかったはずですが、夫婦別姓で「佐藤」を選ばれたときはなんとなく違和感を感じてしまうものです。

片方の親が別の名字

例えば、家族で初めて会った人は、親と子供の名字が違うことに多少違和感を感じることでしょう。

佐藤さんの子供にもかかわらず、子供の名字が「鈴木」だったら、背景に何かドラマがあるのではないかと勘ぐってしまう人も出てくるでしょう。

また、子供の名字に注目した時に、二人目のこどもの名字をどうするかという問題も出てきます。

 

現在は、二人目の子供の名字は一人目と同じにするのが多数派ですが、別の名字にすることも理屈上は可能です。

例えば、その場合、1つの家の中に「佐藤さん」グループと「鈴木さん」グループが出来上がることになります。

 

それ自体は特に問題ではないかもしれませんが、やはり違和感は残りますね。

更に、万一離婚した際には「佐藤さん」が子供の「鈴木さん」を引き取ることなどが出てきます。

その際は通常、子供の名前を変えることになると考えられますが、名字を変えられる子供の負担を考えておくべきでしょう。

 

今の日本では夫婦別姓はメジャーではないため、このようなデメリットが出てきますが、夫婦別姓が浸透してくれば、この点は特に問題ではなくなるでしょう。

夫婦別姓は珍しがられる

冒頭で紹介したとおり、日本では古くから夫婦同姓が常識であり、夫婦別姓は新しい考え方です。

基本的に今の日本では夫婦別姓になることはできませんが次の2つの方法で仮の夫婦別姓になることができます。

①結婚後も、便宜上前の姓を使い続ける。

②実質結婚しているような状態だが、法律上の結婚手続きを取らない。

このどちらのケースでも夫婦別姓を名乗ることができますが、周囲はそれぞれ姓の違う夫婦のことを珍しく思うことでしょう。

 

特に、さきほどご紹介したのアンケ-トをみても分かる通り、ご年配の方は比較的抵抗を持つ可能があります。

①の場合は、あくまで「周囲の目が気になる」かどうかの問題であって、周りが珍しく思うことをなんとも思わない方は直接的なデメリットにはなりません。

 

しかし、さきほどご紹介した②の場合は直接的なデメリットが生じる可能性が出てきます。

続いて、この②デメリットについてみていきましょう。

子供が産まれた時

先程の②の場合に最も大きなデメリットがこどもが生まれた時の処遇です。

法律上結婚をしていないのであれば、戸籍上こどもの父親欄は空白になります。

 

これをどう捉えるかは各人の自由だと思いますが、父親の遺産分配のときなどはトラブルになる可能性が高くなるでしょう。

個人的には、現在事実婚状態で夫婦別姓を強く願っているカップルに子供ができた場合には

②の事実婚は解消して、結婚届けを出し ①便宜上別の性を名乗る という方法を取るのが良いと思います。

結婚によるメリットを得られない

続いて、結婚する時に得られる各種のメリットを得られない点が挙げられます。

  • 配偶者控除等の公的優遇処置
  • 扶養家族手当等の社会的優遇処置
  • 「家族割」などのサービス
  • 「結婚している」という社会的信用

これらのメリットは法的な結婚をしなければ、得られなくなるでしょう。(家族割は利用できるかもしれませんが)

 

これらは夫婦別姓のデメリットというよりも、法律上結婚しないことのデメリットと読み替えることが出来るでしょう。

夫婦別姓の問題点

続いて、夫婦別姓にする際の問題点を考えてみましょう。

離婚が増えるかも

まず、夫婦別姓の問題点として離婚が増加する可能性があげられます。

 

先程もご紹介したとおり、夫婦同姓の場合、離婚をすると旧姓に戻ってしまうため、離婚したことが広く知れ渡ってしまいます。

これを「恥ずかしい」と捉え、離婚を踏みとどまる人も少なくないと言われています。

 

ここでも、離婚をしないことが良いことなのか?という議論は生まれるかもしれません。

好きでなくなった人と長く付き合う必要はないと言う、結婚のメリットは欲しいが、離婚賛成派な考え方を持っているあなたであれば、この点はメリットになるかもしれませんね。

 

特に最近は、結婚式を挙げないカップルも増えているので、そうすると「結婚した」という実感が産まれにくくなり、夫婦の絆・家族の繋がりなどが深まりにくくなることもあるかもしれませんね。

 

しかし、それも個々人の生き方。

 

結婚式や夫婦同姓などの縛りがなくても夫婦の絆を紡ぐのだという人には何のデメリットにもなりませんむしろ、新しい人と結婚できる可能性が拓く大きなチャンスにもなりえます。

 

この問題に関しては、一般的な正解というものはないでしょう。

どのような事があっても、当人が幸せを感じられるのであれば、それで良いのかもしれません。

法整備に時間がかかる

これは私達一般人には直接的な影響はないかもしれません。

当然、夫婦同姓が法的に定められている今、法律は夫婦同姓を前提に作られています。

 

この前提が変わる時、様々な調整が必要になってくるのは当然でしょう。

それに伴う混乱なども出てくるでしょうが、夫婦別姓が「普通」になれば、それも収まってくるでしょう。

【まとめ】夫婦別姓が普及する日も近い

以上、夫婦別姓のメリット・デメリット・問題点をみてきましたが、全体としてメリット方が優位にあるようです。

様々なデメリットもありましたが、これらは社会の常識が変われば簡単に乗り越えられるハードルです。

 

一方、メリットでは「名前を変える」という実務的な手間を省くことができるという明確な利益があります。

少し難しい表現をするならば「スイッチング・コスト(変更コスト)」の削減が可能なのです。

 

名前の変更は、個々人にとってはそれほど負担にならないかもしれませんが、社会全体でみた時には大きなコストになります。

 

市民・国民の状況管理が難しかった昔とは違い、現在はコンピューターが発達しています。

マイナンバーなどの制度も普及している中、個々人・社会全体がこれらのスイッチングコストを払い続けることは合理的ではないでしょう。

 

合理化の一環として夫婦別姓の考え方が浸透することを願ってやみません。